教諭歴16年目の現役の幼稚園教諭として、これまで3000人以上の子ども達に鉄棒や跳び箱、マット運動などの体操、運動指導をしてきました。
さて親が子どもにできるようになってほしいと思う代表的なものが、この逆上がりですよね!
私の勤務する幼稚園でも小学校に就学するまでには、できるようになってほしいと願っている保護者は多いです。
今回は私自身がこれまで逆上がりを子ども達に教えてきた中で、最も効果的なステップをご紹介します。私自身が構築したオリジナルの指導法です!
逆上がりのメカニズム
このように①で地面を踏んだ力に②の蹴り上げの力を加えて、さらに①と②で生まれた力をさらに③の
腕の引きつける力で増幅させて、④で後ろを見ることで①②③の力を効果的な回転の力にして⑤で成功
です!
逆上がりは何がそんなに難しい?!
逆上がりはご両親としては我が子にできるようになってほしいけど、難しいイメージがありますよね?!
では逆上がりの何がそんなに難しいんでしょうか?
それは上記の①~⑤の動作連動をスムーズに行い、力の流れを止めないことです。
すべての動作を連動させる必要があり、どこかで力の流れが止まるとそれだけ失敗のリスクが上がります。
そして一番難しいのは子どもは①~⑤のすべてを理解し、いっぺんに実践できないです。
運動指導では子どもに目標を伝え、実践できるのは3歳児は1つ、4歳児も1つ、多くて2つ、5歳児は2つ、多くて3つです。
①~⑤を一気に伝えても、すべて実践するのは難しいです。
しかし逆上がりは①~⑤をすべて実践しないと成功が難しいという矛盾を抱えた技です。
さらに教えてあげる大人が、どこができてないかの見極めができず、適格なアドバイス、補助ができないことです。
子どもはどうしたらできるようになるかわからず、自分自身で成功できるまで何回も練習しないといけず、成功までとても時間が掛かってしまうのが現状です。
何歳からできる?
早いと2~3歳でも出来ます!
私が今までみた中で一番早かったのは2歳で出来た子がいました!
逆上がりは小さいうちに出来るようになっておいた方がいいです!
理由としては自分の体を持ちあげて後方に回転するので、体が軽いうちの方が成功率は高くなります!
3歳くらいから後述するダンゴ虫やくるりんダンゴ虫を親御さんが手伝ってあげて遊んでおくと、腕力や回転感覚が養われ、後々練習する時に大きなアドバンテージになります!
鉄棒の持ち方
代表的な持ち方は以下の2つです!
私が実際に子ども達に教える際は、逆手持ちのことを“ちょうだいの手”、順手持ちのこと“おばけの手”と伝えてます!
手のひらを上に向けてちょうだいポーズをし、そのまま鉄棒を握れば逆手持ちになりますし「おばけだぞ~」と言って、おばけのポーズをして、そのまま鉄棒を握れば順手持ちになります!
子どもがわかりやすく、イメージしやすい言い方の方が覚えやすいですよね!
逆上がりの成功の可能性が高いのは逆手持ちの方ですが、これも一概には言い切れません!
その子その子によってやりやすい持ち方が違うので、お子様のやりやすい持ち方を聞いて決めるのがいいと思います!
逆上がりの効果的な練習プロセス 3ステップ
1、だんご虫
これは一番最初に練習する、だんご虫という技です。
膝を胸につけ、丸まる様子がだんご虫に似ているから、この名前になっています。
では、だんご虫を練習すれば逆上がりができるようになるかといえば、そうではありません。
では何の為に行うのか?
それは逆上がりができるようになる腕力が備わっているかを確認する為です。
③の鉄棒を自分のお腹にくっつけるイメージで引きつけるでは、自分の体を持ち上げる為に、瞬間的に鉄棒を引きつける力が必要になってきます。
上記の動画のようにだんご虫を10秒できれば、逆上がりを行う腕力があると判断できます!
逆にだんご虫が10秒できなければ、逆上がりができる腕力がまだないので、その際はまず腕力をつけられる運動を行う方が先になります。
2、くるりんだんご虫
これは私オリジナルの指導法です!
先ほどもお伝えしましたが、5つのステップをいっぺんに実践するのは難しいです。
その為、5つのステップで関連していて、同時に行うのが難しくないものをまとめました。
このくるりんだんご虫は逆上がりの5ステップの③と④、そして②と⑤の足を上げる方向をいっぺんに練習できます!
この練習ではだんご虫から逆上がりの要領でまわるというのが肝になります。
体を浮かしたまま腕の力でまわることで、実際の逆上がりでの鉄棒への引きつけのパワーとスピードを身につけられます!
鉄棒の引きつけでよく斜め懸垂等の練習方法が紹介されてますが、それでは腕への負荷が軽すぎて、実際に逆上がりの練習をした時に自分の体を持ち上げられないことが多いです。
くるりんだんご虫を練習するにあたって以下の注意点があります!
前回り降りでゆっくり着地する!
だんご虫やくるりんだんご虫以外にも、逆上がりに必要な腕力を得られる鉄棒遊びが前回り降りです!
つばめ→お布団→前回り降りの順番で鉄棒から降ります!
この最後の前回り降りの時に腕に力を入れ、出来る限りゆっくり着地してみましょう!
だんご虫やくるりんだんご虫と併せて、ゆっくり前回り降りをする練習をすると逆上がりの練習としてより効果的です!
3、軸足の踏み込みと利き足の蹴り上げ
ここでは①、②、⑤の過程の足の踏み込みと蹴り上げの練習過程になります。
利き足と軸足はどう決める?
基本的には手の利き手と同じと思ってもらって大丈夫です!
右手が利き手の子は左足が前で右足が後ろ、左手が利き手の子は右足が前で左足が後ろです。
利き手と逆の足で踏み込んで、利き手と同じ方の足で蹴り上げるのがやりやすいとされています。
しかし経験上、利き手と逆の足の方が蹴り上げやすいという子もわりといるので、実際に両足どっちもやってみて蹴り上げやすい方の足がどっちか聞いて決めるのがいいと思います。
軸足の膝の角度
〇の方は軸足の膝を曲げているので、このまま踏み込むと地面に正しく力が伝わり、利き足での蹴り上げが早く力強く行えます。
×の方は軸足の膝が伸びているので、踏み込む力が地面に伝わりづらく、利き足での蹴り上げにスピードやパワーがでません。
踏み込みを効果的に覚える方法
上記のように台を置いてもいいですね!
軸足が高くなって成功への確率が上がりますし、踏み込むという動作のイメージを持ちやすくなります。
(例:この台を踏んでから、キックしてね)
踏み台を持って行くのが面倒という方は上記のように大人の太ももを踏み台にするのがいいです!
手ぶらで公園に練習に行けますし、一番のおすすめポイントが子どもがきちんと踏み込めているか、すぐにわかるというところです!
地面や普通の踏み台だと軸足できちんと踏み込んでいるかわからないと思いますが、大人の足でしたら力を入れて踏み込みができているかを大人自身の足で感じることができます!
またきちんと踏み込めていない時、踏み込むって何?どうすればいいの?と踏み込むということがわからない時に、大人がタイミングよく太ももを上にちょんと上げることで半ば強制的に子どもに踏むという動作を体験させることができます!
これは無機物の踏み台ではできないメリットですね!
最初は高めにして、一人でまわれたら少しずつ低くしていって下さい!
私は子ども達に踏み込みを教える際は、この自分の足を踏み台にするやり方で行っています。
踏み台の位置や高さは子どもがやりやすい位置に調整してあげて下さい!
両足をのせてやるのも、おすすめです!
踏み足も蹴り足も高い位置から逆上がりが出来るので、成功率も上がります!
鉄棒におへそをくっつけた状態で、逆上がりをするのもおすすめです!
逆上がりはおへそを支点にする技です!
少し肘が伸びていても、鉄棒とおへそが離れなければ成功出来る可能性が高くなります!
もし踏み台や親御さんの太ももを踏んでも、踏み足に力が入らない時は、まずは上記のように踏み足で前方向に踏めるようにしてみましょう!
前足で←方向に蹴り、その後に後ろ足で蹴り上げると自然と→に後ろ足がいきます!
蹴り足が後ろにいくので、より回転しやすくなります!
その後に踏み台や親御さんの太ももで、↓方向に踏んで練習してみましょう!
蹴り足が↑方向にいくので、回転するには、蹴り上げた後に鉄棒をお腹に引き寄せる必要がありますが、踏み台なしで逆上がりを成功させるには、下に踏み込む必要があります!
蹴り足の順番とスピード
逆上がりの初動
上記のように前後に揺れ、勢いをつけてから逆上がりをするのが、一般的に知られている逆上がりの初動ですよね?!
しかしまだ逆上がりができない状態で、上記のように前後に揺れながら逆上がりをやろうとすると膝を
曲げ、重心が軸足にのった時に、蹴り上げるのが難しく(タイミングを合わせるのが難しい)また軸足に
重心がのった時だと蹴り上げやすい実感も感じづらいです。
上記のように軸足を曲げて、重心をのせて静止した状態から、“せーの”で蹴り上げる方が上達には近道です。
最初は軸足で踏み込む状態から蹴り上げるという、蹴り上げのパワーが一番出る状態で練習し、その感覚を覚えることが大切です!
もちろんできるようになったり、慣れてきたら、本人が勢いをつけやすい初動で大丈夫です。
逆上がり補助器での練習方法
幼稚園や小学校で見かけますよね?!
これは逆上がりを一人で練習できる補助器です!
坂を駆け上がって→方向に踏み込み←方向に蹴り上げます!
気軽に練習ができるのがいいですよね!
ただ使い方を理解していないと、いくらやっても逆上がりを成功させるのは難しいと思います…。
というのも前述した通り、逆上がりというのは片足で地面を踏んで、もう片方の足を蹴り上げて後方に回転する技です!
しかしこの補助器は坂を駆け上がってから蹴り上げます!
重要ポイントである地面を踏み込むという動作をしなくても出来てしまうわけです!
つまり力を入れて踏み込む→その力を使って蹴り上げるという連動運動の練習にはならないのです!
実際の逆上がりでは、このように空中を駆け上がるわけではないので…。
なので、こういった補助器は練習の最初の頃に逆上がりの動作を覚える為、後方に回転することに慣れる為くらいの意識で使うようにしましょう!
どうしても補助器を使って練習したい!という時の有効な使用法としては、駆け上がる高さを段々と低くしていくというものがあります!
最初はなるべく上まで駆け上がってから逆上がりをしましょう!
それが出来たら次は少し低い位置に目印をつけ、そこまで駆け上がり逆上がりをしましょう!
出来たら次は更に低い位置…と駆け上がる高さを低くしていき、段々と地面に近い位置で踏み込むことで補助器がなくても逆上がりが出来るようになる有効な練習になります!
大人の補助の仕方
よく公園等でご両親と一緒に逆上がりの練習をしている子を見かけますが、その際に大人が子どもの足を持ってまわしている姿を見ます。
見ていて、持ってまわしている大人がとても大変そうだなと思いますが、正直この補助では何回やっても、逆上がりはできるようになりません。
これは子ども自身がまわろうとしているのではなく、ただ大人がまわしているだけだからです。
補助というのは子どもが危険な状態になった際に助けてあげるほかに、できてない所を補ってあげる意味があります。文字通り“補”“助”ですね!
なので子ども自身でできるようになる為に、どこができていないのか、どこを助けてあげたらいいかを見極めてあげることがとても大切です!
一番オーソドックスな補助は子どもの補助は腰や背中を支え、必要であれば上に押してあげるものです。
逆上がりの失敗で多いのが、鉄棒への引きつけが不十分で途中で肘が伸びてしまう、蹴り上げの勢いが足りないというものですが、この2つの失敗のどちらにも対応ができるからです。
また途中で鉄棒から落ちてしまっても、大人の手が腰、背中付近にあれば、地面に落ちる前に受け止めてあげることもできます!
正しいやり方?の逆上がり
よく幼稚園の保護者に「先生、正しいやり方を身につけられるようにして下さい」と言われることがあります。
これは逆上がりに限ったことでもないんですが…。
これには正直、正しいやり方というものはありません!とお答えしています!
専門的に特定の運動を習っていて、将来は大会に出てメダルや上位入賞を狙っていますなど、少しのフォームや、やり方の違いで記録が大きく変わってしまうなどの理由があれば別ですが、個人的には普段の遊びの延長で行う運動に正しいやり方という概念はないと思ってます。
逆上がりでも①、②、⑤の足の蹴り上げはほとんどやらなくても、③と④の腕の引きつけだけで、できる子もいます。
体が細かったり、2~3歳くらいの小さく軽い時に逆上がりができるようになった子に多いですね。
このように足の力を使わずに逆上がりができる子に「足を蹴ってやりなさい!」とは言いません。
どんなやり方でもできればいいと思います。
幼児期は自分の体の使い方がわからなかったり、いろんな種目の経験もない時期です。
体が大きくなり、腕の力だけでは逆上がりができなくなれば、自然に足の蹴り上げのパワーも使うようになってきます。
足りない部分が出てくれば、自然にそれを補おうとします!
子どもはそれができ、またできるようになるにはいろんな運動経験が必要になります。
その経験から学んでいくのです。
この時期はどんな形であれ、できたという達成感を味わう、運動が楽しいからどんどんいろんな技に挑戦したい、いろんな経験をしていく中で体の使い方を知っていったりと今後に繋げていける大人の関わり方の方が大切だと思います。
まとめ
逆上がりは成功までの工程が多く難しいイメージがありますが、一緒に練習できる過程、一緒に練習した方がいい過程はまとめて練習し、できてる所とできてない所を見極めてできてない過程を練習することが大切です!
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